中世ヨーロッパを書くために調べたこと:ファンタジーじゃなくてマジの修道服を調べるために

創作に活きる情報

2024/09/24 執筆


中世ヨーロッパ(5世紀~15世紀/西暦500年~1500年/古墳時代~戦国時代)について書きたいけど正しい当時の文化ってどんなの? と、なりませんか。

そんな悩みを抱えている方の参考になればと思い、私が作品を書いた時に調べたことをまとめてみました。

今回はイラストを描くにあたって少しだけ参考になりそうな内容も書いてみました。

私自身が小説エベーヌの虚城を書く際に、中世ヨーロッパについての知識が必要だと思ったのですが、私はちっとも詳しくないので思いつく限りの作品に必要なことを調べていきました。

また、作品にどのように活かせるか考えたことも書いてみたので、少しでも創作活動をする人の参考に、また創作をしない人も豆知識として楽しんでいただければと思います。

※筆者は、付け焼き刃で調べた知識をまとめています。鵜呑みにせず、あくまで調べるきっかけとして使っていただけたらと思います。
※筆者は、創作活動は自由であるべきだと考えています。情報に捕らわれることなく、リアリティを足したい時の手助けとして使ってください。

修道服(主に女性に関して)

教会で聖職者が着ているイメージのある修道服。

最近では創作物の中で多用されることもあり、コスプレ用の衣装なども沢山ありますね。

少しセクシーな衣装も多く、これって本当に正しいの? これを教会で着用しているイラストとして描いても大丈夫? と不安になるかもしれません。


そもそも修道服は少し構造が普通の洋服とは違いますからそれも混乱の元ですよね。また、時代や宗派によっても衣装は異なりますし、意外と自由に着こなしている印象もあります。


しかしここが検索の肝です! 宗派の名前をいれて検索することで、画像検索の専門性があがるのか、より正式な衣装を見つけやすくなります


具体的には「修道服 プロテスタント」「修道服 カトリック」などです。


また、画像を参考にする場合は人物が一人で写っていて白背景のものよりも、複数人で写っているもの、背景が室内でできれば教会のものを選んだほうがより安心でしょう。

(※画像には著作権があります。無断でトレースしたりまったく同じ構図で模写したりするのは、やめておきましょう。角度やポーズを変えるとか、色々な写真を参考にしてみると良いです)


他に良い参考資料を見つける方法としては、映画や絵画などの画像を検索するのも私はやりました。


映画ですと『天使にラブソング』は正式な修道女の服装、それから若い一人だけ少し衣装の違う女性がいますが、彼女は見習い修道女だそうですので、見習いの方の衣装も分かってお得です。姿勢が様々あるのもありがたいですね。


また、絵画で検索するとかなり様々な修道服の着こなし方があるのが分かりますね。最近はAI画像もありますのでこれは西洋絵画に詳しい人でなければ中々判断が難しいかもしれません。修道服というジャンルにおいては絵画を参考にするのは少し難しそうです。


それから、もう一つそれほどオススメではありませんが一応紹介しておきます。

修道服のマイナーな名前を調べて検索するという方法です。

シスター」や「修道服」くらいですと知名度があり、コスプレ衣装もこういう名前で売られていることが多いので色々ヒットしてしまいますが、修道服は「スカプラリオ」とも言います。この名前で調べると気持ち専門性があがるような気がしないでもないです。


正直、今回の「修道服」検索に関しては絵画と別名の方式はあまり利益が少なかったです。でも、他の検索をする時に意外と役に立ったりするので紹介させていただきました。


今回に関しては宗派を入力する、映画関連で探す、などが良い方法かもしれません。

宗派の検索なら男性の修道服も出てきますから特にオススメです。ただし男性の場合は宗派や階級によって服装が変わりますので更に詳しく調べる必要があります。更に季節によって服装が変わります。これも注意が必要です。必ず変わるのかどの階級の人まで変わるのか、そこら辺も調べてみる必要があるでしょう。

少なくとも牧師様(プロテスタント)と司祭(カトリック、神父様とも)は季節によって宗教行事に合わせて服装の色あいが変わるようです。

燭台

燭台とは蝋燭(ろうそく)を立てる台です。


日本で使われていた燭台は(平安時代とかの漫画に出てくるなんか紐が出ていて、紙で覆われていたりいなかったりするやつ。今回関係ないからあんま調べてない)は、割と一本だけ立てるもので、足が長いものが多いイメージがありますが、今回調べたのは西洋の燭台です。


西洋は三股になっているのが多い印象ですね。

飾りも豪華なものが多いです。これも普通に検索すると現代の実際には火を付けないライトみたいな燭台など、ちょっと違うものが出てきてしまうので燭台 アンティーク」「燭台 中世」などで検索すると色々とお洒落かつ本物っぽいものが出てきます。

調べてみて描くのが面倒くさそうだな、と思ったら、画角を工夫して描くのをやめるか、トレスオーケーなフリー素材を探すなどの方法があります。私は確か描くのをやめました(欲しい感じのフリー素材が見つからなかった)。


ちなみに、よりリアルにしようと「燭台 教会」と検索したところ物凄く豪華なものが出てきてしまい、これは描きたくないな…と個人的には思いました。ただ、少しワードを足して「燭台 教会 プロテスタント」とすると、ヒット数は少ないですがもう少し描きやすい燭台が出てきます。これも教会関連を描く時に覚えておくと良いかも知れません。


プロテスタントは基本的に質素であることを大切にしています。

教会の内装、外装もあまり派手なものはありません。一般的に結婚式をあげたり、ヨーロッパの教会として海外で取り上げられたりして皆さんのイメージに思い浮かぶものはカトリックが多いかも知れませんね。

従って豪華な雰囲気にしたいならカトリック教会を調べましょう。


文章だけ書く人も、例えば初めて教会に行った人の感想が、外装、内装の豪華さに気圧されているのか、それとも静かな空気の中で穏やかな気持ちになっているのか、変わってきますのでどんな教会にいるのか画像検索して想像しながら書いてみると捗るかもしれません。


それから、国や時代によってどちらの宗派がメジャーなのか(下手すると今はあるけど昔はまだ成立していない宗派もある)調べてみると、更にキャラクターの解像度が上がるかも知れません。

ちなみにチラッと調べたら日本とアメリカはプロテスタントの方が少し多く、イタリアはカトリックがかなり多いようですね。ご参考までに。

教会と孤児

孤児院施設に関しては、創作物を見ると出てくることも多いですが、正直なかなか複雑です。

そもそも中世ヨーロッパの時代背景、福祉施設が現在と比べて未発達であったことや、捨て子が沢山いたこと、女性が子供を生む道具同然であったことなど、様々な問題が関わっていて孤児院施設についてだけ詳しく調べれば物語が書けるかと言われると難しいと思います。


孤児院をテーマにした物語ならもちろんそれについて深く調べていただくのが一番良いのですが、そういうわけではないけど物語の中にそれに関する内容はいれたい、とか、ガッツリそれをテーマにするわけじゃないけど興味はある、という場合もあると思います。


一旦詳しく調べたい方向けに少し書きます。ざっくりした話は次の行間の後に!

詳しく調べたい方は

書籍も出ていますし、ネット上でも論文などを読むことが出来ます。

ある程度の外観はネット上でも補うことが出来ると思うので論文検索用のGoogle「Google Scholar」で「中世ヨーロッパ 孤児」など検索してみると良いです。私がサッと検索して上の方に出てきたものを読んだのが下記の論文です。

河原温2022「中近世ヨーロッパ都市に見る《慈善》と《救貧》──金澤周作『チャリティの帝国』に寄せて──」「三田学会雑誌」115巻2号。

この論文は、この時代の人たちがどんな意識を持って福祉事業を行っていたのかとか、それによってどんな問題が起きたのか。そもそもどんな福祉施設があったのかについても触れられていて、色々な情報を網羅してくれている感じがしました。

こういったネット上で読むことの出来る論文から、まず当時の施設の名前など単語を覚えて、それをキーワードに書籍などを検索していくとスムーズに欲しい情報にたどり着けるかもしれません。



さて!ザックリした話です!

はっきり言いますと詳しく書けば書くほどボロが出ます。

なので、フワッとさせる裏技(?)です。おそらくよく作家さんがやるのはヨーロッパの話ではないことにすること。つまりファンタジー世界の何かしらの宗教施設ということにしてしまえば、地球の歴史と関係なくなりますのである程度勝手にやれます。

(その分、自分で世界の情勢を考えなくちゃいけないのでしっかり話を作り込みたい人はかえって大変かもしれませんが…。ただ、現実のヨーロッパの話にするよりはある程度おおめに見てもらえるはずです。作者も読者も)


あと、私がやるのは舞台を狭くすることです。

舞台が狭くない状態で考えないといけないことを一度考えてみましょう。


例えばどこかしらの町にある孤児院施設だとします。その施設の子供たちはどこから来たのか、性別はどのような割合なのか、何歳で施設に来て、どのような暮らしをしていたのか、そして町の人は施設に対してどのような感情を持っていて、施設の支援者は誰なのか、など考えなければいけないことが沢山あります。施設の外の情報が必要になってくるのです。


しかし

舞台を狭くして施設の中のことだけ考えれば良いなら、子供たちはどのような扱いを受けているのか、施設の職員は優しいのか、それとも虐待のような行為をしているのか、といった内容についてディテールを細かくしていくことが出来ます。

(本当は内側の情報を細かくするのには外側の情報も必要なのですが……まぁ、ボロが出にくいという話です)


どうしても外側の情報を凝りたい場合でも、同じ様に狭いところから考えるのがオススメです。

先程の例のように

子供たちがひどい扱いを受けている
→施設は経済的に潤っていない、または誰かが着服している可能性がある
→その場合、子供たちは施設を逃げ出したいと思っているかも
→そうするともし施設の外に出ても町の人に愛想よく振る舞えないかもしれません。
→となってくると、町の人は孤児院施設にあまり良い印象を持っていないでしょう。

色々なパターンがありますが、内側の情報をメインに描くことで多少は外側の情報をぼかす事ができます


つまり、最初に紹介した地球じゃない場所で、かつ舞台を狭くすることでかなり書きやすくなる…気がします。


そうして私は、『エベーヌの虚城』という作品の中で(一応舞台は地球ですが)、森の中で話を完結させています。不思議なお話なのでオッケーです。


あと最後にもう一つ裏技を紹介します。

何もかも調べるのが面倒な時は、教会や孤児院について描かれている漫画、アニメ、映画などを見ましょう。一番手っ取り早いです。

ただし、その作者が時代考証を綿密に行っているかは分からないのでリスキーではありますが、作品を楽しみながら勉強もできます。


私も今までいくつか見てきた作品のおかげである程度外観を学んだ部分がありますので、あくまで雰囲気を知る程度ですが(一つの作品だけ見てその情報のみで書くと著作権が怪しくなってきます。気をつけましょう)有効だと思います。

そんな目的で作品を見るなと思う方もいるかもしれませんが、結果的に見たものが面白い作品であればそれをきかっけに好きになると思いますし、結構学者さんで「この映画は時代考証が素晴らしいから見て!!」と言ってくれる人も見かけます。なのでまぁ良いんじゃないでしょうか。そういう学び方も。

さて、今回のブログはこの辺で終わりになります。

皆様の調べ物は捗ったでしょうか…?


「参考になった!」「実際にどんなふうにこの情報を利用しているか見てみたい!」

という方は、ぜひ当ブログに私の書いた作品が載っておりますのでご覧ください。


中世ヨーロッパの調べ物についてはまだ書きたいことがあるのですが、一旦次は別のテーマについて書いています。次回も創作活動をするにあたってこころがけるといいことを具体例を用いて書いているので気になる方はぜひ。


それでは次の記事でお会いしましょう。


次回掲載予定の記事内容

出血量と生命維持
お墓の供え物

今回の調べ物で書かれた作品↓(センシティブな内容が含まれますご注意下さい)https://kingyokirakira.com/2024/12/07/ebe-nunokyojyou/

その他の筆者の活動をまとめたリットリンク↓
https://lit.link/kingyohirahira

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